はじめに
「今さら3級?」──Webデザインの仕事を10年続けてきた私にとっても、最初はそう感じる部分がありました。
ただ、あらためて“国家資格”という肩書きや、新人に勧める立場としての責任感を考えたとき、一度ちゃんと受けてみようと思ったのです。
実際に試験を体験してみると、スキルの棚卸しや知識の抜け漏れを確認できたことはもちろん、意外な“発見”や“難しさ”もありました。
この記事では、ウェブデザイン技能検定3級を受けたリアルな感想を、自分自身の気づきや学びとあわせてまとめています。
これから受験を考えている方の参考になれば嬉しいです。
ウェブデザイン技能検定3級とは?──試験の構成と目的

“資格の難易度”や“どんな試験なのか”があやふやなまま受ける人も多いですよね。全体像を知ると、準備の方向性も見えてきます。
ウェブデザイン技能検定は、厚生労働省が認定する国家資格のひとつです。
職業能力開発促進法に基づいて設けられた「技能検定制度」の中の1カテゴリであり、Webに関する実務スキルを客観的に証明できる数少ない公的資格とされています。
3級はその中でも「初級者向け」に位置づけられており、Web制作に関心がある人や、実務に入る前の基礎力を測る場として利用されることが多いです。学生や未経験者のエントリーとしても人気があります。
試験は「学科」と「実技」の2つに分かれており、両方に合格してはじめて技能士としての認定が得られます。
- 学科試験:択一式(マークシート)で、HTMLやCSS、Webに関する基礎知識を問う問題が中心です。
- 実技試験:配布された素材や指示に従い、HTML/CSSコーディングを行う課題が出されます。実務に近い作業が求められるため、PC操作にある程度慣れている必要があります。
それぞれの合格基準は、学科・実技ともに70%以上の正答率です。なお、片方だけ合格した場合は「一部合格」となり、次回試験で残りの科目のみ受けることができます。
申し込みは年に4回程度実施される試験日程にあわせて行い、中央職業能力開発協会(JAVADA)の公式サイトからエントリーできます。
受験料は学科・実技あわせて1万円前後です。
👉 ウェブデザイン技能検定公式ページ(中央職業能力開発協会)
3級は受験資格に学歴や年齢の制限はなく、誰でも挑戦可能です。事前に特定の講座を修了している必要などもありません。
私が受験を決めたとき、正直この試験の存在は知っていたものの、「どんな試験かまではよくわかっていなかった」というのが本音でした。
実はこれまで、部下や新人にこの資格を勧めていたにもかかわらず、自分自身は受けたことがなかったのです。
“国家資格”という安心感から紹介してはいたものの、実際の試験内容や難易度についてはあやふやなままでした。
だからこそ今回、自分で体験してみようと思い立ちました。
ですが、実際に試験を受けることで、公式な評価基準に沿ったWeb制作を意識する機会が生まれ、自分の中にあった知識の“感覚頼り”を見直すきっかけにもなりました。
この章ではまず、そうした「資格としての基礎情報」をお伝えしました。
次章では、なぜこの資格が今、注目されているのかをもう少し掘り下げていきます。
なぜこの資格が注目されるのか──重要性と背景にあるもの

“Web系資格”は増えてきたけれど、公的なものとしての安心感や就職時の説得力に魅力を感じる人も多いのでは
ここ数年で、Webデザインやコーディングに関する学びのハードルはぐっと下がりました。
オンライン講座やYouTube、学習サービス(Progateやドットインストールなど)を使えば、独学である程度の知識を得ることができます。
ただ一方で、学習歴やスキルを第三者が客観的に判断する方法が少ないのも、Web業界の特徴です。
ポートフォリオがものをいう世界ではあるものの、評価する側によって「どこまでできれば合格か」の基準が曖昧になる場面もあります。
そんな中で、このウェブデザイン技能検定は数少ない「国家資格」として、一定の信頼性と客観性を持っている点が強みです。
特に3級は、初心者~初級者にとって「自分が学んだことを確認し、形として残せる指標」として選ばれることが多く、学生や未経験からの転職を目指す人にも適しています。
また、この試験の設計そのものが「実務の現場に近い」点も見逃せません。
実技では、HTMLやCSSを使って簡単なWebページを制限時間内にコーディングする必要があり、スピードと正確性、そして設計意図の読み取り力が問われます。
こうした構造から、単なる暗記では合格できないという特徴があり、「わかったつもり」を試すには非常に良い機会です。
私の場合、正直「もう仕事でやってるし、改めて資格はいらないかな」と思っていた時期もありました。
でも、後輩たちが成長していく中で、「私はそれを本当に“教えられる側”として理解しているだろうか?」という問いが浮かんだのです。
“実務経験がある”という自負はあっても、あえて基礎に立ち返ることで、自分の指導や説明に芯を持たせられるようになったと感じています。
ただ、正直に言えば、Web業界は資格の有無だけで評価が決まるような世界ではないとも思っています。
現場で求められるのは、実際に動くものを作れるかどうか、そしてチームで進められるかどうか──そうした「実践力」や「信頼」が何より重視されるからです。
だからこそ、ウェブデザイン技能検定の3級も「持っているから有利になる」ではなく、「ないよりはまし」「初学者が方向性を定めるための目印」くらいに捉えるのがちょうどよいのかもしれません。
私自身、資格を持っていないことで損をしたことは特にありませんでした。
それでも今回あえて受験したのは、“誰かに勧めるものとして、自分でも一度ちゃんと通っておきたかった”という理由が大きいです。
一方で、まだ経験が浅い人にとっては、「なにをどこまで理解すればいいのか」「自分の習熟度をどう測ればいいのか」がわかりづらい場面も多いはずです。
そういう意味で、この検定は基礎を段階的に整理しながら学ぶための“地図”のような役割を果たしてくれると感じます。
知識を詰め込むためというより、「学習の輪郭をつかむ」目的での受験は、特におすすめしやすいと感じました。
勉強法と試験当日の動き──私が実際にやったこと

本番の流れを知らないままだと、当日けっこう焦ります。準備の仕方に迷っている方の参考になれば嬉しいです。
資格試験を受けるとなると、まず迷うのが「何をどこまで勉強すればいいのか」ですよね。
私の場合も、最初は情報が少なく、対策の方向性を決めるまで少し手間取りました。
勉強に使ったもの
私は市販の過去問題集を1冊購入し、主に学科対策に活用しました。
特に3級の場合、HTMLやCSSの基本構文に関する設問が多いため、まずは出題傾向をつかむことに重点を置きました。
学科は比較的知識寄りなので、空き時間に少しずつ問題を解くスタイルでも進めやすかったです。
一方で実技については、手を動かしておくことが何より大事だと感じました。
実技対策のポイント
実技試験は「コーディングそのものが評価対象」になるため、頭で理解していても手が止まると時間が足りなくなります。
私は実際の過去問を使って、制限時間内に模擬制作する練習を2〜3回行いました。
使ったエディタはVisual Studio Codeです。
本番での使用ツールと少し違う部分もあるかもしれませんが、手に馴染んだ環境でコーディングすることで、速度とミスの少なさを意識できました。
また、意外と見落としがちなのが「ファイルの命名ルール」「DOCTYPE宣言」「適切なHTML構造の維持」など、実務経験者こそ忘れがちな基礎です。
試験当日の流れと持ち物
試験当日は、まず会場に着いてから受付・本人確認などを済ませ、時間になると着席して説明を受けます。
パソコンは会場に用意されていて、自分のマシンは使えません。そのため、標準的な操作環境に慣れておくことも地味に大事だと感じました。
持ち物としては、以下のようなものが必要です。
- 受験票
- 本人確認書類(免許証など)
- 時計(パソコンに時計が表示されないこともある)
- ペン・メモ帳(必要な範囲で使用可)
制限時間のプレッシャーは少なからずあるので、自宅で本番を想定して時間を計りながら練習するのがおすすめです。
「もっとこうすればよかった」と思ったこと
一番の反省点は、「あいまいな知識をそのままにしないこと」でした。
例えば fieldset や label の扱い、HTML5の細かい構造要素など、普段そこまで使っていなかったタグについては、実際に手を動かして確認しておくべきだったと感じます。
また、JavaScriptについても油断はできません。
私は普段の業務でJavaScriptをあまり深く扱ってこなかったため、「見てわかる範囲の問題が出るだろう」と思っていました。
ですが実際には、基本的な構文の理解や処理の意味をしっかり問う問題が出題され、想像以上に手応えがありました。
まったくの未習得のままで臨むと、思わぬところで点を落とす可能性があります。
そのため、jQueryの基礎文法や、簡単なJavaScriptの構造は最低限押さえてから受験することをおすすめします。
動画教材やスライドでの軽い確認だけでも、安心材料になりますし、試験中の焦りが減ります。
さらに、試験仕様が年度ごとに微妙に変わる可能性もあるので、最新の試験要項を事前に必ず確認しておくことも大切です。
受験を通じて得たもの──自信と小さな変化

“合格した・してない”よりも、“行動できた”という事実が自分を支えてくれることってありますよね
今回の受験を通じて、一番強く感じたのは、自分のスキルを“人に伝える目線”で見直すきっかけになったということです。
私は普段、現場での作業やディレクション、そして若手への指導など、実務に基づいた仕事をしてきました。
その中で「これくらいはできて当然」「このくらい知っているだろう」と、つい自分の“感覚”を基準に話してしまうこともあったと思います。
でも、試験という“外部の基準”に沿って取り組むことで、自分の中にある思考やスキルの組み立て方が、思っていた以上に感覚頼りだったことに気づかされました。
それは、決して悪いことではないのですが、指導や共有をする立場としては大事な視点だったと感じています。
また、会場で試験を受けていると、年齢もキャリアもさまざまな人たちがいることに驚きました。
学生のような若い方もいれば、明らかに社会人として働いていそうな人もいて、「あ、この資格はどんな立場でも一度“確認”として使えるものなんだな」と素直に思えました。
当日は緊張もありましたし、普段と違う環境でのパソコン操作に戸惑いもありましたが、それでも「最後までやりきった」という実感は、自分にとって大きな意味を持ちました。
合否ももちろん大切ですが、なにより“受けてみた”という事実が、自分にとっての自信になったのです。
たとえば今、部下や後輩にこの資格の話をするときも、「実際にこうだったよ」と具体的に伝えられることが増えました。
合格証を見せること以上に、“リアルな経験のある人”としての説得力を持てるようになったと感じています。
そしてなにより、「自分もまだちゃんと学べる」「挑戦できる」と再確認できたこと。
これは、働き続けるうえで地味に効いてくる、小さくて大きな収穫でした。
経験者が3級を受けた理由と、誰に向いているか

“今さら3級?”と思われるかもしれませんが、私にとっては大きな意味がありました。経験者だからこそ見える価値もあるんです
Webデザインとコーディングの仕事に10年ほど携わってきた中で、これまで「資格がなくても仕事はできる」という実感をずっと持っていました。
実際、資格を問われることもほとんどなく、現場での成果やポートフォリオ、コミュニケーション能力の方がはるかに重視されてきたように思います。
それでも、私が今回あえてウェブデザイン技能検定3級を受験したのには理由があります。
ひとつは、この資格が“国家資格”として認定されていること。
Web系には多くの民間資格がありますが、「技能検定」という公的な枠組みの中にあることで、誰に対しても一定の信頼性を持って提示できる指標になると感じました。
もうひとつは、新人や後輩にこの資格を勧める立場になってきたからです。
これまで何人もの部下に対して「ウェブデザイン技能検定ってあるから、受けてみてもいいかも」と勧めてきたのに、自分は一度も受けたことがないという矛盾がずっと引っかかっていました。
“実際に体験していないのに勧める”ことへの違和感が、今回の受験の後押しになったのです。
ただし、受験してみて感じたのは、「誰にでも勧められるわけではない」ということでもありました。
たとえば、HTMLやCSSをまったく触ったことがない初心者には、いきなり3級の受験は少しハードルが高いかもしれません。
試験問題にはある程度のコード読解や制作経験が求められますし、「知っているだけ」では解けない設問も含まれています。
そのため、Progateやドットインストールなどで、ある程度手を動かしてから受ける方が、理解度も結果も変わってくると思います。
逆に、こんな人にはおすすめしやすいと感じました。
- Web制作に少し触れたことがあり、体系的に学び直したい人
- スキルの棚卸しをしたい中級者
- 就職活動や転職時に、ひとつの「学習の証明」を持っておきたい人
そして、私のように「指導する側」の人間にも、“自分の経験を第三者の基準で見つめ直す”という意味で非常に価値があると実感しています。
どんな資格でも、「受かればOK」ではなく、“なぜ受けるのか”が自分の中で言語化できているかが大事なんだと思います。
まとめ
ウェブデザイン技能検定3級は、知識を証明するためだけでなく、自分のスキルや姿勢を見直す機会にもなりました。
とくに、誰かに伝える・教える立場の人にとっては、実体験として受けてみる価値があると感じます。
合格を目指すのはもちろん大切ですが、「自分の学びの地図」として活用する意識があると、得られるものも変わってくるはずです。

