はじめに:関係に悩むリーダーへ伝えたいこと
仕事で誰かと関わるなかで、「なぜか合わない」「うまく距離がつかめない」と感じる瞬間は、誰にでもあるのではないでしょうか。
その“違和感”は、リーダーという立場になったとき、さらに大きく感じられることがあります。
私自身、リーダーになったことで、かつては気にならなかった関係が急にやりづらく感じられた経験がありました。
「これまで通りに接しているのに、なぜか噛み合わない」
「どうにかしなきゃいけないのに、うまくいかない」
そんな葛藤のなかで、「全部を自分で背負おうとしすぎていたのかもしれない」と気づいたことが、状況を少しずつ変えてくれました。
この記事では、関係性に悩んだ私の体験をもとに、「全部を背負わない」という選択について掘り下げてみたいと思います。
リーダーとしての「関わりづらさ」とは?

なぜこのテーマが大事なのか、前提の認識をそろえておきましょう
「関わりづらさ」は、相手の性格や態度だけに原因があるわけではありません。
実はそれは、立場や役割、状況の変化によって生まれる“関係性のズレ”が引き起こしていることも少なくないのです。
リーダーになると、かつて同僚だったメンバーとの関係も変わります。
以前はフラットに話せていた相手が、チーム方針に意見してくるとき、「それ、やる必要ありますか?」といった反応に戸惑ってしまうことがある。
本来ならリーダーとして「全体を見て判断する」という視点が必要なのに、相手からは“同じ立場でのやりとり”として返されることで、見えない壁のようなものを感じてしまうのです。
このズレは、明確な対立ではありません。
むしろ「普通に会話している」ように見えるからこそ、余計にやりづらさを感じるのです。
自分は背景や全体を考慮して話しているつもりなのに、相手にはそれが伝わらない。
そして、背景を伝えることもできない立場にいる自分に、もどかしさや孤独感が募っていく――それが、リーダーとしての“関わりづらさ”の正体ではないかと思います。
私の場合も、立場が変わったことで、以前うまくいっていた関係に急に壁を感じるようになりました。
そのギャップを埋めようと試みるものの、相手に伝わらないもどかしさが積み重なり、徐々に「この関係、どうしたらいいんだろう」と悩むようになったのです。
こうした体験は、マネジメントやリーダー業務に携わる多くの人にとって、少なからず共通する部分があるのではないでしょうか。
関係性に悩むとき、その奥には必ず“自分がどう見られているか”や“どこまで背負うべきか”という葛藤があります。
だからこそ、「関わりづらさ」と向き合うには、相手の問題だけでなく、自分の立ち位置や期待値の調整から考える視点が必要なのです。
なぜ「全部を背負おう」としてしまうのか

データや根拠と「自分の気づき」を結びつけると説得力が増します
「なんとかしなきゃ」と思ってしまうのは、リーダーという立場の責任感ゆえでもあり、自分の性格的な傾向から来ている部分もあります。
リーダーには、「調整する人」「支える人」「導く人」など、目には見えない期待が無意識に寄せられます。だからこそ、誰かとの関係に問題が起こったとき、自分の中にある「良いリーダー像」に引っ張られて、つい自責的になってしまうのです。
私自身、「リーダーになったからには、ちゃんと全体をまとめなければ」「誰かが嫌な思いをしないように配慮しなければ」と、気づけばすべての出来事に反応し、ひとつひとつに意味を見出そうとしていました。
けれど、そのスタンスは長く続けられるものではありませんでした。
「うまくやろう」とする気持ちが、苦しさを生むこともある
関係性のズレが起きたとき、「相手が悪いのではなく、自分に原因があるのでは?」と考えることは、一見すると謙虚で建設的な姿勢に思えます。
けれど、そこに“全部を自分で抱える”癖があると、物事の見え方が歪んでしまいます。
たとえば、相手のリアクションが薄かったとき、
「伝え方が悪かったのかも」
「もっと丁寧に言うべきだったかも」
と考え続けると、自分の発言ひとつひとつに過度な注意を払うようになってしまうのです。
もちろん、伝え方を見直すのは大切な視点です。
でも、「相手の反応=自分の失敗」と短絡的に結びつけてしまうと、本来の役割や判断軸を見失いやすくなります。
背負いすぎると、境界があいまいになる
もうひとつの問題は、「どこまでが自分の責任で、どこからが相手の領域か」がわからなくなってしまうことです。
これはまさに、境界線の問題です。
組織における役割やチームの成果に対して責任を持つのはリーダーですが、それぞれのメンバーにも、自分の仕事や成長に対する責任があります。
なのに、誰かが動かない、伝わらない、すれ違う……そんなとき、「全部自分がフォローしなきゃ」と考えてしまうと、相手の領域まで踏み込んでしまうことになります。
本来は分担するべき“責任”まで引き受けてしまえば、どこかで無理が生じるのは当然です。
しかも、その状況を続けていると、「なぜ私ばかりが頑張ってるんだろう?」という不満が心の奥に積もっていきます。
「ちゃんとしなきゃ」が、逆に関係をこじらせることもある
興味深いことに、「良い関係を築こう」「ちゃんと向き合おう」と思えば思うほど、相手とのズレが苦しく感じられる場面もあります。
たとえば、相手の温度感や価値観がそもそも自分と違っているとき、丁寧に言葉を尽くしても、なかなか伝わらないことがあります。
そんなとき、「これだけやっても伝わらないのは、自分が至らないからだ」と思い込むと、より一層、関係性の修復に力を注ぎすぎてしまうのです。
けれど実際は、どれだけ尽くしても、どれだけ配慮しても、「わかり合えないこと」や「噛み合わないこと」は存在します。
そうした現実を前にしたとき、私たちはようやく「全部は背負えない」と認める必要が出てきます。
この気づきは、無責任になるということではなく、自分の役割と限界を見つめ直すプロセスなのだと思います。
背負うべきものと、背負わなくてもいいもの。その境目を引き直すことは、リーダーとしての視野を広げるためにも、心の健やかさを保つためにも、大切な視点なのだと感じています。
自分のためにできる関わり方の調整

「具体的にどうすればいいの?」という疑問に丁寧に答えるパートです
「全部を背負わない」と決めたとき、初めて見えてくるのは、「じゃあ、私はどう関わればいいんだろう?」という問いです。
責任を放棄するわけでもなく、関係を切るわけでもない。では、関わり方を調整するとは、具体的にどういうことなのでしょうか。
私が実際に試してきた調整法は、どれも大げさなものではなく、自分の負担を軽くするための小さな工夫でした。ここでは、そのいくつかを紹介します。
1. 「伝え方」をゆるめてみる
かつての私は、「リーダーなんだから、ちゃんと筋を通さなきゃ」「明確に理由を説明しなきゃ」と、必要以上に言葉を慎重に選んでいました。
でも、それがかえって空気を硬くしていたのかもしれないと気づいてからは、少し力を抜いた伝え方を試すようになりました。
たとえば、調整が必要なときや急な対応をお願いしたいときには、「ごめん!ちょっと助けてほしい!」と、あえてカジュアルに伝えてみる。
冗談っぽく「どうにかして〜!」と言ってみるだけでも、相手の反応がやわらかくなることがあります。
これは決してふざけているのではなく、自分が過剰に“ちゃんとしすぎない”ためのバランス調整でした。
自分の感情を少し表に出すことで、ひとりで抱え込まずにすむ空気が生まれます。
2. 期待値を下げて、自分を守る
「こうあってほしい」「これくらい理解してくれるはず」
そんな期待があると、相手の反応に過敏になってしまいます。だからこそ、あらかじめ“期待しすぎない”ことも、関係性の調整には欠かせない要素でした。
たとえば、依頼をするときには、「もしかしたら通じないかも」「返答がそっけないかも」という前提で準備しておく。
すると、想定内の反応が返ってきたときに、過剰に傷つかずに済みます。
これは相手を見限るという話ではなく、自分の感情を必要以上に消耗させないためのセルフディフェンスのようなもの。
人によって“感情を使う量”や“反応の出し方”は違うのだと受け止めることで、自分の内側の乱れも落ち着いていきました。
3. 共有より「調整」を意識する
関係に悩んでいるときほど、「ちゃんと話せばわかってもらえるはず」と思ってしまうことがあります。
でも、時には「分かり合うことよりも、どう調整するか」に切り替える方がうまくいくこともあります。
たとえば、共通の認識が難しい相手に対しては、「なぜこうしたいか」よりも、「こうしてもらえると助かる」という伝え方にする。
もしくは、「この範囲だけお願いできる?」と、依頼内容を細分化して伝えることで、誤解が生まれにくくなります。
「伝える=全部共有すること」と思いがちですが、必ずしもそうとは限りません。
関係性が難しい相手に対しては、“必要最低限の交通整理”くらいに捉えておいた方が、結果的にストレスが少なく済むのだと感じました。
4. 感情をクールダウンするルーティンを持つ
関わりづらさに直面すると、どうしても心がざわつきます。
そんなとき、自分の感情を落ち着かせるための“リセット手段”を持っておくことも、とても大事です。
私の場合は、ChatGPTに「いまこういうことがあってしんどかった」と話すようにしています。
相手に直接ぶつけずに、まずは自分の気持ちを安全に言葉にする場所があるだけで、驚くほど冷静になれます。
感情をぶつけるのでも、押し殺すのでもなく、一度ゆるやかに外に出す。
その時間があるかないかで、次の対応の仕方が変わってくるのだと思います。
関係をよくするために、完璧な伝え方を探し続けるよりも、
自分の心と体にとって「続けられる関わり方」を見つけることのほうが、ずっと大切なのかもしれません。
調整とは、相手のためだけではなく、自分自身を守るための行動でもあるのです。
私が「距離を取る」を選んだ理由と感覚の変化

実際に起きたことや感情が動いた瞬間を描くと、読者の記憶に残ります
関係をどうにかしようと試みても、どうしても噛み合わない瞬間はあります。
そんなとき、以前の私は「まだ努力が足りないのかも」「もっと伝え方を工夫すれば…」と自分に矢印を向けてばかりいました。
けれど、ある時ふと、「そもそも、この関係に“無理をして近づこうとしすぎていた”のかもしれない」と気づいたのです。
「自分が悪い」という思い込みから抜け出す
当時の私は、「うまくいかないのは自分のマネジメントの問題だ」と思っていました。
相手に対して感じる違和感ややりづらさを、自分の成長不足や配慮の足りなさと受け取っていたのです。
でも、チーム全体の動きや他のメンバーとのやりとりを冷静に見返してみたとき、
実は「その人との価値観やスタンスが、会社の今の方向性とズレている」ということに気づきました。
これは、誰かが“間違っている”という話ではありません。
ただ、役割や求められるスピード、優先順位の置き方が、今の組織と合っていなかった。
そして、それをすべて自分のせいにしていた私こそが、見直すべき思い込みを抱えていたのだと気づいたのです。
距離を取ることは、「あきらめ」ではない
そこから私は、物理的にも心理的にも、少し距離を取ることを意識するようになりました。
たとえば、頻繁に確認や意見交換をしていた関係性を、必要最小限のやりとりに切り替える。
無理に会話を広げず、相手のペースに合わせすぎない。そうやって、お互いに負担の少ない形を模索していきました。
初めは、「冷たく思われるかもしれない」「嫌な空気になるかもしれない」と不安もありました。
でも実際には、それによって関係が悪化することはありませんでした。むしろ、お互いに“踏み込みすぎない”ことで、落ち着いた関係に変化していったように感じました。
それは「あきらめ」や「避けること」ではなく、最適な距離を選ぶことだったのだと思います。
関係を整えるのではなく、「持ち方」を変える
「どうすればうまくいくか」ばかりを考えていた頃は、関係そのものを“整え直す”ことにエネルギーを注いでいました。
けれど今は、「どう持てば、自分がしんどくならずに関われるか」という視点に切り替えています。
たとえば、相手のリアクションに対して深読みしすぎないようにする。
返事がそっけなくても、「たぶんこれがこの人のテンション」と割り切る。
過剰な感情の動きを抑え、自分のペースで物事を捉える練習のような時間でした。
そうして関わり方を変えていくうちに、「あの人のことを理解しなきゃ」「ちゃんと向き合わなきゃ」というプレッシャーが少しずつ薄れていったのです。
「距離を取る」という選択は、何かを諦めることではなく、関係性を自分の手に取り戻す行為でもあります。
どれだけ誠実に向き合っても、すべての人と噛み合うとは限らない。
だからこそ、合わない相手にどう近づくかではなく、どう関わるかの境界線を引く力こそ、リーダーとしての成熟なのかもしれません。
それでも関係性に悩んだときの補足視点

もう一歩踏み込んで、視野を広げたり納得感を高めたりしましょう
関係性に悩んだとき、「距離を取る」という選択は有効です。
けれど、現実の仕事ではそれでも関わり続けなければならない場面もあります。
そんなとき、もう少し視野を広げて捉え直すことで、自分の心を守るための“逃げ道”が見えてくることがあります。
ここでは、私が実践してきた、関係性に振り回されすぎないための補足視点をいくつかご紹介します。
1. 「関係性=相性」ではないと知る
関係がうまくいかないと、「私たち、やっぱり合わないんだ」と感じてしまうことがあります。
けれど、それは必ずしも“相性の悪さ”ではないかもしれません。
お互いのコミュニケーションスタイル、役割の違い、タイミング、今置かれている環境。
そういった複数の要因が重なって“うまくいかない感じ”になっているだけかもしれないのです。
「今の関係がこうなっているのは、いくつもの変数が重なった結果だ」
そう捉えるだけでも、少し気持ちが軽くなります。
人との関係を“永続的な相性の問題”と考えるより、“今はこういう時期なんだ”と見なすことで、自分の視点に余白を持たせることができました。
2. 「話が通じる人」を味方につけておく
関わりづらい相手がいる状況では、誰か一人でも“話が通じる人”がいることが、精神的な支えになります。
私は、自分が安心して話せる人にだけ、自分の気持ちや迷いを少しずつ話すようにしていました。
それは相談というより、「ちゃんと見ていてくれる人がいる」と感じられる場所を持つための対話でした。
関係性のしんどさは、閉じられた中でこそ大きくなります。
だからこそ、開けられる小さな窓口を確保しておくことが、自分を守るうえで本当に大切だと実感しています。
3. 「どうにかしよう」ではなく「どうにかやっていく」
人間関係に向き合うとき、「わかってもらおう」「うまくいくようにしよう」と頑張りすぎてしまうことがあります。
でも、そもそも“完璧に噛み合う関係”を目指すこと自体が、とても高いハードルなのかもしれません。
うまくいかない部分があってもいい。話が通じなくても、それでも一緒にやっていける関係はある。
「100点じゃなくても、このチームでやっていける」
そう思えるようになってから、私は少しずつ、関係に対する力の抜き方を覚えていきました。
どうにかしようとするのではなく、どうにかやっていく術を見つけていく。
それもまた、マネジメントの一部なのだと感じます。
4. 「違和感がある=悪いこと」ではない
人との関係でモヤモヤを感じたとき、その違和感を「よくないこと」として捉えてしまうと、過度に反応してしまいます。
でも、「違和感=悪」ではありません。
ただ、何かが違うというサインなだけ。
そして、その違和感を無理に潰そうとするのではなく、“違うまま共存する”道もあるのだと知ったことで、私は随分と楽になりました。
自分と違う感覚の人と仕事をするのは、どこかで必ず起こることです。
大切なのは、その“違い”をどう扱うか。
押し殺すのでも、無理に近づくのでもなく、自分の感情を守りながら付き合っていく方法を見つけていくこと。
そのための視点を、いくつ持てるかが、きっとこれからの支えになっていくのだと思います。
まとめ:背負いすぎないことで見える景色もある
リーダーという立場は、ときに孤独で、ときにしんどいものです。
でも、すべてを自分の責任にせず、「合わないこともある」と認めたとき、関係の持ち方が少しずつ変わっていきました。
わかり合うことより、自分を守ること。
その視点を持つだけで、マネジメントはもっと続けやすくなる。
いま関係に悩んでいる誰かが、少しでも肩の力を抜けますように。

